【書評・要約】『君は戦略を立てることができるか』音部大輔|戦略の立て方6手順

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。Amazonアソシエイト・プログラムの参加者として、適格販売により収入を得ています。

「戦略を立てて」と言われて、何から手をつければいいか迷ったことはないだろうか。音部大輔『君は戦略を立てることができるか 視点と考え方を実感する4時間』は、戦略の立て方を「目的」と「資源」の2つに絞り、6つの手順に落とし込んだ本だ。この記事では6つの手順を表で整理し、本質的な課題の見つけ方、戦略を1文に書くテンプレート、前作『なぜ「戦略」で差がつくのか。』との違いまでまとめる。

目次

結論:「戦略っぽい言葉」を手順に変えてくれる一冊

評価は★4.0。戦略という言葉はあいまいなまま使われがちだが、本書は「目的をはっきりさせ、勝てる資源に集中し、それを文章にする」という流れで、誰がやっても同じ順番で考えられる形にしている。概念を深掘りするより、手を動かすための本だ。

  • 向いている人:初めて戦略や事業計画を任された人/マーケティングや企画で「方針」を書く立場の人/前作を読んで実際の手順を知りたくなった人
  • 向かない人:競争戦略の理論やフレームワークを幅広く学びたい人

君は戦略を立てることができるか 視点と考え方を実感する4時間/音部大輔(宣伝会議) 評価:★4.0

  • 戦略は「目的を明示する」から「組織に展開する」までの6つの手順で立てる
  • 本質的な課題は、競合や過去との差ではなく「目的と現状のギャップ」
  • 目的を再解釈し、優勢な資源に集中する内容を1文に書く

📕 単行本をAmazonで見る  📱 Kindle版を見る

戦略の立て方は6つの手順:目的から組織への展開まで

本書が示す戦略策定のプロセスは、「目的を明示する」「目的を再解釈する」「資源を探索する」「資源優勢を確立する」「文章に書く」「組織に展開する」の6つだ。前半の2つが目的、真ん中の2つが資源、最後の2つが伝えることにあたる。

手順本書の名称やること押さえるポイント
1目的を明示する達成したい状況を言葉にするSMARTで具体化し、関係者全員が同じ絵を描けるか確かめる
2目的を再解釈する「達成できたとしたら、どう達成されたか」を考える売上額を顧客数や使用回数に置き換えるなど、動ける単位にする
3資源を探索する使える資源を洗い出すヒトは他の資源の効き目を左右する「係数」
4資源優勢を確立する勝てる資源を決めて集中させる勝つのは多くの資源を使えた側
5文章に書く目的と資源を1文にまとめる「いつまでに・何を達成するために・何を実現すべく・何に集中するか」
6組織に展開する書いた戦略をチームに渡す文章になっているから同じ理解で動ける

※「やること」「押さえるポイント」の列は、本書の内容をもとにした筆者の整理。

大事なのは順番だ。いきなり「何をやるか(施策)」から考えず、目的を2回くぐらせてから資源の話に入る。手順2までで、戦略の半分は決まると言ってもいい。

本質的な課題とは「目的と現状のギャップ」

手順1の土台になるのが、課題の捉え方だ。本書は「課題を見つけるためには、目的を明確にする」と言い切る。

本質的な課題とは、競合や過去との違いではなく、「達成したい状況(=目的)」と「現状」とのギャップです

君は戦略を立てることができるか

「競合より認知が低い」「昨年より数字が落ちた」は、つい課題として挙げてしまう比較だ。しかしこれは物差しを外に置いた差分で、自分たちがどこへ行きたいのかとはつながっていない。目的が決まって初めて、何が足りないか=課題が決まる。逆に言えば、目的があいまいなチームは、課題もあいまいなまま施策を積み上げることになる。

目的の書き方:SMARTと2つの注意点

では目的はどう書くか。本書は目的を立てる道具としてSMART(Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound)を使い、さらに2つの注意点を挙げている。

  • 達成したい状況を正確に書き、「達成できたら自分たちは十分に満足できるか」を確かめる
  • その成功が、関係者全員に共通の理解として伝わるようにする

1つ目は「数字は達成したのに、なんだか嬉しくない」を防ぐための問い。2つ目は、同じ目標を見ているつもりで、人によって思い浮かべるゴールがずれている状態を防ぐためのものだ。SMARTが目的の形式を整える道具だとすると、この2点は中身を確かめる道具と言える。

目的の再解釈とは:「達成した姿」から逆算する

手順2の「目的の再解釈」が、本書でいちばん特徴的なところだ。目的を書いたら終わりではなく、「達成できたとしたら、それはどんな状態だったのか」を問い直す。本書はそのための質問をいくつも挙げている。

売上目標を達成したということは、どのようなユーザーの支持を得て、どのような商品構成だったのか?

君は戦略を立てることができるか

ほかにも「シェアが1位となったということは、どのような市場状況が生まれたのか?」「私たちがその山に登頂できたということは、どのルートを通ったのか?」といった問いが並ぶ。どれも、ゴールに着いた場面を先に想像させる質問だ。

再解釈すると、目的の単位が変わることがある。たとえば売上額が、顧客数や使用回数に置き換わる。売上額のままでは誰が何をすればいいか決まらないが、「誰に何回使ってもらうか」になれば打ち手が見えてくる。本書はこの変化を、目的がより具体的に理解でき、実行しやすくなることだと説明している。

資源優勢とは:ヒトは「係数」、勝つのは資源を多く使えた側

目的が決まったら、次は資源だ。本書の資源の見方で印象に残るのは、ヒトの位置づけである。

資源の中でも「ヒト」はすべての資源に対して「係数」として機能することが特徴である

君は戦略を立てることができるか

予算や時間と同じ列にヒトを並べるのではなく、ほかの資源にかけ算で効いてくるものとして扱う。同じ予算でも、使う人によって成果が何倍にも変わる、という見方だ。資源を洗い出すときに「人数」だけを数えていると、この係数の大きさを見落とす。

そして資源優勢の考え方の根っこにあるのが、「勝利する側は多くの資源を使うことができた側」という一文。筆者なりに読み替えると、全体の資源量で勝てなくても、ある一点に資源を寄せればその局面では優勢をつくれる、ということになる。手順4の「資源優勢を確立する」は、その寄せる先を決める工程と捉えると理解しやすい。

もう一つ面白いのが、プロフェッショナルを「異なる単位を乗り越えるスキルを持つ人」と見る視点。売上が足りないときに、商品の2%の値下げや人員の増加といった、別の単位の打ち手に置き換えて実現できる人のことだ。手順2の「単位が変わる」と同じ話が、ここで人の能力として出てくる。

戦略を1文に書くテンプレート

手順5では、目的と資源を文章にする。本書のテンプレートは「「いつ」までに、「収益目標」を達成するために、「再解釈した目的」を実現するべく、「活用すべき優勢な資源」に集中・注力する」という1文だ。

枠中身本書の例
いつまでに期限年度末までに
収益目標明示した目的(手順1)売上10億円を達成するために
再解釈した目的動ける単位に置き換えた目的(手順2)既存の愛用者に似た新規顧客を1万人増加するべく
優勢な資源集中する資源(手順3・4)愛用者の高い満足度を再現するブランド体験をターゲットの3万人に提供する

※「中身」の列で各枠を6つの手順に対応させたのは筆者の整理。

1文にすると、ごまかしがきかなくなる。「売上10億円」と「新規顧客1万人」がつながっているか、「ブランド体験を3万人に」が本当に優勢な資源なのか。文章のどこかが弱ければ、手順のどこかが詰め切れていないということだ。この1文があるから、手順6で組織に渡したときにも解釈がぶれにくい。

類書との比較(筆者の整理):『なぜ「戦略」で差がつくのか。』『良い戦略、悪い戦略』『論点思考』

君は戦略を立てることができるかなぜ「戦略」で差がつくのか。良い戦略、悪い戦略論点思考
中心の問い戦略をどう立てるか戦略とは何か、なぜ必要か良い戦略と悪い戦略は何が違うかどの問題を解くべきか
キーワード目的の再解釈・資源優勢・文章化戦略と計画・目的の違い決定的な要素への集中解くべき問題の定義
読むと得られるもの戦略を書く手順戦略という言葉の定義戦略の良し悪しを見分ける目問題設定の技術

※比較は各書の広く知られた主張と、当ブログの各書評にもとづく筆者の整理。

『なぜ「戦略」で差がつくのか。』との違い

本書は、同じ著者の『なぜ「戦略」で差がつくのか。』を土台にした続編にあたる。前作は、戦略と計画の違いや、戦略が必要になる理由(目的があり、資源が有限だから)といった戦略の定義を固める本だった。本書はその定義を前提に、実際にどう立てるかを6つの手順に落としている。どちらから読むか迷うなら、「戦略って結局なに?」と感じている人は前作から、「定義はいいから立て方を知りたい」人は本書からがいい。

『良い戦略、悪い戦略』との違い

『良い戦略、悪い戦略』(リチャード・P・ルメルト)は、目標を並べただけの「悪い戦略」を批判し、状況の中から決定的な要素を見つけてそこに資源を集中させることを説く。資源を一点に寄せるという点では、本書の「資源優勢」と同じ方向を向いている。違いは視点で、ルメルトは出来上がった戦略を見分ける側から、本書は戦略を書く側から語っている。本書のテンプレートで1文を書いたあと、それが「目標の羅列」になっていないかをルメルトの基準で点検する、という使い方ができる。

『論点思考』とのつながり

本書の「本質的な課題は目的と現状のギャップ」という考え方は、『論点思考』(内田和成)の「解くべき問題を定義する」と地続きだ。論点思考が「どの問いに答えるか」を決める技術だとすれば、本書は目的を起点に課題を決め、そこから資源配分まで一気に進める。問題設定でつまずくなら論点思考、課題は見えているのに打ち手がまとまらないなら本書、という使い分けになる。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q. 戦略の立て方の手順は?
本書では「目的を明示する」「目的を再解釈する」「資源を探索する」「資源優勢を確立する」「文章に書く」「組織に展開する」の6つの手順で戦略を立てます。目的を固めてから資源の話に入るのがポイントです。

Q. 本質的な課題とは?
本書では、競合や過去との違いではなく、「達成したい状況(=目的)」と「現状」とのギャップを本質的な課題としています。そのため、課題を見つけるにはまず目的を明確にする必要があります。

Q. 目的の再解釈とは?
目的が達成できたとしたら「どのように達成されたのか」を問い直し、目的をより具体的で実行しやすい形に置き換えることです。売上額が顧客数や使用回数に変わるなど、目的の単位が変わることもあります。

Q. 『君は戦略を立てることができるか』の要約は?
戦略を「目的」と「資源」で捉え、6つの手順で立てる方法を解説した本です。目的と現状のギャップを課題とし、目的を再解釈したうえで優勢な資源に集中し、それを1文の戦略として書いて組織に展開します。

Q. 『なぜ「戦略」で差がつくのか。』との違いは?
前作は戦略と計画・目的の違いなど「戦略とは何か」を固める本で、本書はそれを土台に「戦略をどう立てるか」を手順に落とした続編です。定義を知りたいなら前作、立て方を知りたいなら本書が向いています。

Q. どんな人向けですか?
戦略や事業計画を任されたばかりの人、マーケティングや企画で方針を文章にする立場の人に向いています。講義4時間分をもとにまとめた本で、手順に沿って読み進められます。

まとめ

『君は戦略を立てることができるか』を読むと、戦略を立てるのが難しい理由の多くは、目的がぼやけたまま資源の話を始めてしまうことにあるとわかる。目的を書き、達成した姿から逆算して単位を変え、勝てる資源に寄せて、1文にする。派手なフレームワークはないが、そのぶん明日の企画書からそのまま使える。「戦略を立てて」と言われて手が止まったときに、開く順番を教えてくれる一冊だ。

君は戦略を立てることができるか 視点と考え方を実感する4時間/音部大輔(宣伝会議) 評価:★4.0

📕 単行本をAmazonで見る  📱 Kindle版を見る

戦略クラスタの関連記事:なぜ「戦略」で差がつくのか。/良い戦略、悪い戦略/売れるもマーケ 当たるもマーケ/ZERO to ONE

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次