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頑張って答えを出したのに、「そもそも聞きたかったのはそこじゃない」と言われる。原因は分析の腕ではなく、最初の問いの選び方にあることが多い。内田和成『論点思考 BCG流 問題設定の技術』は、この「何を解くか」を決める工程だけを1冊かけて扱う本だ。この記事では論点思考の要点を整理し、『イシューからはじめよ』との違い、同じ著者の『仮説思考』との使い分けまで比べていく。
結論:「解く前」の工程を鍛える一冊
評価は★4.0。問題解決の本は多いが、その手前の問題設定に絞った本は意外と少ない。分析のテクニックを求めて読むと肩透かしだが、「頑張っているのに成果につながらない」と感じている人には、つまずいている場所を教えてくれる。
- 向いている人:上司や顧客から課題を振られる立場の人/企画・コンサル・マーケなど、課題設定から関わる職種
- 向かない人:論点がすでに決まっていて、分析や資料化の手順を知りたい人
論点思考 BCG流 問題設定の技術/内田和成(東洋経済新報社) 評価:★4.0
- 論点=「解くべき問題」。最大の失敗は間違った問いに答えること
- 候補→絞り込み→確定→全体確認の順で論点を決める
- 「解けるか」「解けたら何が良くなるか」で論点をふるいにかける
論点思考とは「解くべき問題」を定義すること
本書の定義はシンプルで、「論点とは「解くべき問題」で、論点を定義するプロセスを論点思考という」。ここで著者が強調するのは、答えの質より先に問いの質が成果を決めるという点だ。「最大の過ちは間違った問いに答えること」という一文が、本書全体の出発点になっている。
裏を返せば、どれだけ精度の高い分析をしても、問いがずれていれば成果はゼロになる。だから「「正しい問いに答えること」が重要」であり、問題解決の上流に、問題そのものを選ぶ工程を置く必要がある。
論点を決める4ステップ:候補・絞り込み・確定・全体確認
では論点はどう決めるのか。本書が示す流れは「「候補」→「絞り込み」→「確定」→「全体確認」」の4段階だ。
| ステップ | やること | このとき考えること |
|---|---|---|
| 1. 候補 | 論点になりそうなものを広く出す | 何が問題なのか |
| 2. 絞り込み | 候補をふるいにかける | それは解けるのか/解けるとどんないいことがあるのか |
| 3. 確定 | 解くべき論点を1つに決める | 現象や観察事実を論点と取り違えていないか |
| 4. 全体確認 | 全体を見渡して取りこぼしを確かめる | より大きな目的に照らしてずれていないか |
※「このとき考えること」の列は、本書の3つの問いと注意点を各ステップに割り当てた筆者の整理。
最初から1つに決め打ちせず、まず論点になりそうなものを広く出す。そこから絞り込み、確定させたあとにもう一度全体を見渡して、取りこぼしや筋の悪さがないかを確かめる。いきなり「これが課題だ」と飛びつくのではなく、広げてから狭める手順を踏むことで、ずれた問いに走り出すリスクを下げる設計になっている。
論点の見分け方:「現象」と「解けない問題」を外す
絞り込みの基準として本書が挙げるのが、何が問題なのか/それは解けるのか/解けるとどんないいことがあるのか、という3つの問いだ。
特に効くのが「現象や観察事実は論点ではない」という指摘。「売上が落ちている」「離脱率が高い」は起きていることの描写であって、解くべき問題そのものではない。現象を論点だと思い込むと、打ち手が対症療法に寄っていく。
もう一つは「その論点は「解決できるか」にこだわる」こと。重要でも自分たちに打ち手がない問題に時間を使っても成果は出ない。重要度だけでなく、解けるかどうか、解けたときの効果まで含めて論点を選ぶ。ここが「頭のいい問い」と「成果につながる問い」の分かれ目になる。
与えられた論点を疑う:目的を問い、分解する
論点は自分で立てるものだけではない。上司やクライアントから降ってくる課題も多い。本書はそれを鵜呑みにせず、「上司に「なぜやるのか」「目的は何か」をぶつける」ことを勧める。振られた課題の裏にある本当の論点を確かめてから動け、ということだ。
あわせて著者は、仕事ができる人の条件として、大きな論点を解ける単位まで分解できることを挙げている。大きすぎる問いはそのままでは手がつかない。分解して初めて、どこから手を付けるべきかが見えてくる。
読んで実際に変わったこと:「何が決まれば前に進むか」を考える
ここからは筆者自身の話。本書を読んでから、仕事で常に「何に対して意思決定をすることができれば物事が進むか」を考えるようになった。
議論や作業が止まっているとき、つい「もっと情報を集めよう」「もっと考えよう」となりがちだ。でも本書の言う論点は、言い換えれば「答えを出せば前に進む問い」のこと。何を決めれば進むのかがはっきりすると、やるべきことはそこに向けて絞られる。
もう一つ変わったのが、物事が決められないときに「何がわかっていないから決められないのか」を深く考えられるようになったこと。決められない原因は、判断力ではなく、判断に必要な何かが欠けていることが多い。その欠けているものを特定できれば、次に調べること・確かめることが決まる。
『イシューからはじめよ』を読んだときと同じく、「何に対して答えを出すべきか」を最初に置く重要度が、自分の中で一段上がった一冊だった。
独自比較:『イシューからはじめよ』『仮説思考』とどう違うか
| 論点思考 | イシューからはじめよ | 仮説思考 | |
|---|---|---|---|
| 中心のテーマ | どの問いを解くかを決める | イシューを見極めて解き切る | 仮の答えを置いて検証しながら進める |
| 扱う範囲 | 問題設定に集中 | 見極め〜分析〜ストーリーラインまで | 答えに当たりをつける工程 |
| 向いている悩み | 頑張っているのに成果につながらない | 作業量のわりに価値が出ない | 考えるのが遅い・動き出せない |
※比較は各書の広く知られた主張にもとづく筆者の整理。
論点思考と『イシューからはじめよ』の違い
本書はよく『イシューからはじめよ』(安宅和人)と並べて紹介される。どちらも「解く前に、何を解くかを決めよ」という主張では一致しているが、重心の置き場所が違う。
- 『イシューからはじめよ』:イシューを見極めたあと、仮説を立て、ストーリーラインと分析で答えを出すまでの一連の生産性を扱う。論点の見極めはその入口
- 『論点思考』:入口の問題設定そのものに1冊を使う。候補の出し方、絞り込みの基準、与えられた課題の疑い方など、「どの問いを選ぶか」の判断に紙幅を割いている
ざっくり言えば、イシューは「見極めて、解き切る」本、論点思考は「選び方そのもの」を掘る本だ。イシューを読んで「で、そのイシューはどう決めるの?」と感じた人には、本書がちょうどその手前を埋めてくれる。
論点思考と『仮説思考』の違い:どちらから読むべきか
もう一つの比較対象が、同じ著者の前作『仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法』。仮説思考が「限られた情報から仮の答えを置き、検証しながら進める」思考法なのに対し、論点思考は「そもそもどの問いに答えるか」を決める思考法だ。順番としては論点で問いを決め、仮説で答えに当たりをつける。2冊はセットで使う前提で読むと位置づけがわかりやすい。著者はこのあと『右脳思考』も出しており、3冊がシリーズとして扱われている。
あわせて効く考え方
抽象度を一段上げて考えたい人は、『メタ思考トレーニング』(細谷功)の「Why型思考」も相性がいい。「なぜやるのか」を問い直す動きは、本書の「目的をぶつける」とほぼ同じ方向を向いている。
あわせて読みたい
- 【書評】イシューからはじめよ(安宅和人)——論点を見極めてから解き切るまでの全体像
- 【書評】メタ思考トレーニング(細谷功)——「一つ上」から目的を問い直す思考のOS
- 【書評】ハック思考(須藤憲司)——観察から法則を見つけ、課題設定に生かす
よくある質問(FAQ)
Q. 論点思考とは?
「解くべき問題」=論点を定義するための考え方です。答えを出す前に、そもそもどの問いに答えるべきかを決めます。本書は「最大の過ちは間違った問いに答えること」という考えが出発点です。
Q. 論点思考を身につけるには?
議論や作業が止まったときに「何が決まれば前に進むか」「決められないのは何がわかっていないからか」を問う習慣をつけるのが近道です。本書の4ステップ(候補→絞り込み→確定→全体確認)に沿って論点を出し直すのも効果があります。
Q. 『論点思考』の要約は?
論点=「解くべき問題」を正しく選ぶための本です。候補→絞り込み→確定→全体確認の順で論点を決め、「解けるか」「解けたら何が良くなるか」で選別します。現象を論点と取り違えないこと、与えられた課題の目的を確かめることも強調されています。
Q. 難しいですか?
専門用語は少なく、ビジネス経験があれば読み進められます。ただし内容は抽象度が高めなので、自分の仕事の課題に当てはめながら読むと理解しやすくなります。
Q. どんな人向けですか?
上司や顧客から課題を受け取る立場の人、企画・コンサル・マーケなど課題設定から関わる人に向いています。
Q. 『イシューからはじめよ』との違いは?
イシューは見極めから分析・ストーリーラインで解き切るまでを扱い、論点思考は「どの問いを選ぶか」という問題設定の工程を深く掘り下げています。
Q. 『仮説思考』とどちらから読むべき?
論点思考で「何を解くか」を決め、仮説思考で「答えに当たりをつける」という関係です。問題設定でつまずいているなら本書から、手が遅いと感じるなら仮説思考からがおすすめです。
まとめ
『論点思考』が教えてくれるのは、努力の量より先に、努力を向ける先を決めるべきだということだ。現象を論点と取り違えない、解けない問いを抱え込まない、振られた課題の目的を確かめる。どれも当たり前に聞こえるが、忙しいときほど飛ばしてしまう工程でもある。解く力はあるのに成果が出ないと感じたら、問いの選び方を見直すきっかけになる一冊だ。
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