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「もっと解像度を上げて」と言われても、何をどう上げればいいのかわからない。そもそも解像度が高いとはどういう状態なのか。馬田隆明『解像度を上げる』は、仕事でよく使われるのに曖昧なままのこの言葉を、「深さ・広さ・構造・時間」の4つの視点と、行動の仕方に分解した本だ。この記事では本書の要点を表で整理し、プレモーテムなどの具体的な方法、『イシューからはじめよ』『論点思考』との違いまで見ていく。
結論:「解像度」という曖昧な言葉を使える道具にする一冊
評価は★4.0。「解像度」は便利な言葉だが、言われた側は何を直せばいいのかわからないことが多い。本書はそれを4つの視点に分け、それぞれに具体的な問いと行動を用意している。352ページと厚めだが、手元に置いて見返す辞書のように使える。
- 向いている人:「解像度が低い」「もっと具体的に」と言われがちな人/新規事業・企画・プロダクトなど、課題の定義から関わる人/1on1 や壁打ちで相手の考えを深める立場の人
- 向かない人:特定の分析手法やフレームワークの使い方だけを手早く知りたい人
解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法/馬田隆明(英治出版) 評価:★4.0
- 解像度が高い=課題を深く・広く・構造的に、時間軸も含めて捉えている状態
- わかっていることを明確にして、わかっていないことを把握する
- 考えるだけでなく、フィードバックが得られる最小の行動で解像度を上げる
解像度が高いとは?本書の定義と4つの視点
本書は「解像度が高い状態」を一文で定義している。核になるのは次の部分だ。
深く広く構造的に捉えて、課題に最も効果的な解決策を提供できていることが解像度が高い状態
解像度を上げる
ポイントは、解像度が「頭の良さ」ではなく課題の捉え方として定義されていることだ。しかもこの定義の前には「時間軸を考慮に入れながら」という条件が付いている。深さ・広さ・構造に時間を加えた4つが、本書の言う解像度の中身になる。
解像度を上げる4つの視点(深さ・広さ・構造・時間)
| 視点 | 捉えること | 本書から拾える問い・行動 | やりがちな失敗(筆者の整理) |
|---|---|---|---|
| 深さ | 原因や要因をどこまで掘り下げているか | 「なぜ」を7段階掘り下げる/わかっていないところを把握する | 1〜2回の「なぜ」で止めて、表面の原因に手を打つ |
| 広さ | 別の見方・選択肢をどれだけ検討したか | 極端なケースや外れ値、例外に目を向ける/「そもそも」を問う | 例外を真っ先に検討外にする |
| 構造 | 要素の分け方と関係、重要度 | 意味のある形でわけ、要素間の関係性と重要性を把握する | 形式的にMECEに分けて満足する |
| 時間 | 時間による変化や流れ | 課題を時間軸も含めて捉える | 今の状態だけを見て、変化や順番を考えない |
※「本書から拾える問い・行動」は読書ノートの引用から各視点に割り当てたもの。「やりがちな失敗」の列は筆者の整理。
4つは独立したチェック項目というより、行き来しながら使うものだ。深く掘ると選択肢が見えて広さが増し、広げた要素を整理すると構造になり、その構造が時間でどう変わるかを考える。どこか1つが欠けると、課題の像はぼやける。
深さ:「なぜ」を7段階掘り、わかっていないことを明確にする
深さの視点で本書が示す行動はシンプルで、「7段階「なぜ」と掘り下げる」こと。よく聞く「なぜを5回」より多い。
わかっているところを明確にすることで、まだわかっていないところを把握する
解像度を上げる
深く掘るときに効くのがこの考え方だ。「わからない」をそのまま抱えていると、どこを掘ればいいかも決まらない。わかっていることを先に言葉にすると、残りが「まだわかっていないこと」として輪郭を持ち、次に調べること・確かめることが決まる。報告や相談の場で「わかっていること/わかっていないこと」を分けて話すだけでも、相手と不確実性を共有できる。
広さ:外れ値・例外と「そもそも」の問いで視野を広げる
広さは、別の見方や選択肢をどれだけ検討したか。本書が勧めるのは、平均的なケースではなく端っこを見ることだ。
極端なケースや外れ値、例外に目を向けてみる
解像度を上げる
例外はノイズとして外したくなるが、そこに普段の見方では見えない手がかりがある。外れ値を「チャンスはないか」と見る発想は、『問い続ける力』(石川善樹)の「良い意味での例外を見つける」という話とも重なる。
もう1つの道具が「そもそも」の問いだ。本書は「そもそも何のためにあるのか」「そもそも必要なのか」「そもそもどうやって作ればいいのか」という問いを、前提を見直すために有効だとしている。目の前の施策に集中しているほど視野は狭くなるので、意識して一段引いて問い直す。
構造:「意味のある形で分ける」とはどういうことか
構造化というと、要素を漏れなくダブりなく分けることを思い浮かべやすい。本書の定義はもう一歩踏み込んでいる。
構造の視点とは、意味のある形でわけ、要素間の関係性やそれぞれの想定的な重要性を把握すること
解像度を上げる
分けることそのものはゴールではない。「意味のある形で」分け、要素どうしがどうつながり、どれが重要なのかまで見えて初めて構造になる。逆に言えば、きれいに分けられていても、その分け方で次の打ち手が決まらないなら、解像度は上がっていない。
行動で解像度を上げる:最小単位のフィードバックとプレモーテム
本書の副題は「4視点と行動法」。机の上で考えるだけでなく、動くことで解像度を上げる方法も扱っている。中心にある問いがこれだ。
FBが得られる最小単位の行動とは何か?
解像度を上げる
リーンスタートアップの MVP に近い考え方で、プロダクトに限らず、企画書でも施策でも使える。作り込んでから見せるのではなく、学びが得られる最小限の形で早く外に出し、フィードバックの回数を増やす。考えるだけでは上がらない解像度を、現実の反応で上げにいく発想だ。
プレモーテムとは:失敗したと仮定して原因を探る
本書が紹介する方法の1つがプレモーテムで、ノートには「未来視点で失敗したと仮定して原因を探る方法」と書き留めている。「うまくいかないかもしれない」と漠然と心配するのではなく、「失敗した」と決めてしまってから、なぜ失敗したのかを具体的に挙げる。始める前に不確実性を言葉にできるので、対策も打ちやすくなる。
質問とメモも、解像度を上げる行動になる
人に話を聞くときも同じだ。本書は「その質問をすればどういった答えが返ってくるのか」「その時は次に何を聞けば良いのか」という、答えと再質問の仮説を持って質問すると、より良い質問ができるとしている。また「すぐにメモを取れる環境にしておく」ことも勧めている。思いついたことを外に出しておく仕組みがあるかどうかで、考えの積み上がり方が変わる。
本書はアントレプレナーシップを「コントロール可能な資源を超えて機会を追求すること」と紹介している。解像度を上げるのは、手持ちの資源の範囲で正解を探すためだけではない、というメッセージとして読んだ。
読んで考えたこと:「何がわかっていないか」を意識し続けたい
ここからは筆者自身の話。
正直、読む前は「解像度」という言葉を、抽象度が高くて曖昧な言葉だと感じていた。本書の定義を読んで、それがはっきりした。深さと広さはもともと意識していたが、時間軸はあまり意識できていなかった。これからは奥行きも常に考えていきたい。
構造化は得意なほうだと感じているが、だからこそ形式的に分けるのではなく、「意味があるか」「仮説を前に進められるか」をより意識したいと思った。「なぜを5回」も、日頃の仕事で本当にできているかと問われると、できていない。7段階という数字には「頭をひねりちぎって考えろ」というメッセージを感じて、自戒として残している。
いちばん大きかったのは、「何がわかっていないのか」を常に意識したいと思えたことだ。わかっていること・わかっていないことを分けて伝えれば、不確実性をコントロールできる。プロジェクトでも「失敗するとしたらなぜか」を問い続けたい。懸念をステークホルダーに頭出ししておくだけでも、新しいフィードバックが得られるからだ。
ヒアリングでは、仮説 a の先に a-1・a-2・a-3 のシナリオを持って臨むと、同じ時間でも質が上がる。自分の中では「シナリオ作成」と呼んでいて、思考を止めずにいたいところだ。一方で、意見と事実を分けることは自分ではできても、顧客の声を分けるのは難しいと再認識した。事実=実際の行動としてヒアリングするようにしたい。
もう1つ、良い問いに出会ったらストックしているのだが、本書にもいい問いが多かった。特にメモしたのは、解決策がうまくいったら何が起こるのか、その解決策が本当に解決している課題は何なのか、と解決策の側から課題を問い直すものだ。解決策の前には必ず課題があり、課題がぼやけていれば解決策もピンボケする。定期的に見返したい本になった。
『解像度を上げる』と『イシューからはじめよ』『論点思考』の違い
「課題を正しく捉える」ことを扱う本は他にもある。よく並べて読まれる2冊と比べると、本書の位置づけがわかりやすい。
| 解像度を上げる | イシューからはじめよ | 論点思考 | |
|---|---|---|---|
| 中心の問い | 課題をどれだけ鮮明に捉えているか | 本当に答えを出すべき問いは何か | どの問題を解くべきか |
| 扱う範囲 | 4つの視点+行動で課題の像をはっきりさせる | イシューの見極めから分析・ストーリーラインまで | 問題設定(論点を選ぶ工程)に集中 |
| 向いている悩み | 「解像度が低い」と言われる/考えがぼやける | 作業量のわりに価値が出ない | 頑張っているのに成果につながらない |
※比較は各書の広く知られた主張にもとづく筆者の整理。
『イシューからはじめよ』(安宅和人)は「解の質」より「問いの質」を上げよ、という本だ。『論点思考』(内田和成)は、その問いをどう選ぶかに1冊を使っている。どちらも「何を解くか」を決める本で、本書はその手前、課題そのものをどれだけはっきり見えているかを扱う。問いを選ぼうにも課題がぼやけて見えているなら、先に本書で解像度を上げるのが順番として自然だ。
よくある質問(FAQ)
Q. 解像度が高いとは?
本書の定義では、課題に対して時間軸を考慮に入れながら、深く広く構造的に捉えて、最も効果的な解決策を出せている状態のことです。頭の良さではなく、課題の捉え方の細かさを指します。
Q. 解像度を上げる4つの視点とは?
深さ・広さ・構造・時間の4つです。深さは原因をどこまで掘ったか、広さは別の見方をどれだけ検討したか、構造は意味のある形で分けて関係と重要度をつかめているか、時間は変化や流れを捉えているかを見ます。
Q. 『解像度を上げる』の要約は?
曖昧に使われがちな「解像度」を4つの視点に分解し、それぞれの上げ方を示した本です。「なぜ」を7段階掘る、外れ値や例外を見る、意味のある形で分ける、といった視点の使い方に加え、フィードバックが得られる最小の行動やプレモーテムなど、動きながら解像度を上げる方法も扱います。
Q. プレモーテムとは?
プロジェクトが失敗したと仮定して、その原因を未来の視点からさかのぼって探る方法です。始める前に懸念を具体的な言葉にできるので、対策やステークホルダーへの共有がしやすくなります。
Q. 『イシューからはじめよ』との違いは?
『イシューからはじめよ』は答えを出すべき問いを見極めて解き切るまでを扱い、本書はその前提となる「課題をどれだけ鮮明に捉えているか」を4つの視点で掘り下げます。課題がぼやけていると感じるなら本書から読むのがおすすめです。
まとめ
『解像度を上げる』が教えてくれるのは、「もっと考えろ」を「どこを考えればいいか」に変える方法だ。深く掘る、広げる、意味のある形で分ける、時間で見る。それでも見えないところは、小さく動いてフィードバックをもらう。曖昧な言葉に輪郭を与えてくれる本は、一度読んで終わりにせず、考えが行き詰まったときに開き直す価値がある。
解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法/馬田隆明(英治出版) 評価:★4.0
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