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「アウトプットから逆算して仕事を進めよう」とはよく言われるが、具体的に何をどの順番でやればいいのかは、意外と誰も教えてくれない。高松智史『コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト』は、その仕事の進め方を論点からアウトプットまでの6ステップに分け、会議・質問・報告といった作法まで言葉にした本だ。この記事では要点を整理し、定番の『コンサル一年目が学ぶこと』との違いも比べていく。
結論:「仕事の基本」を言葉にしてくれる一冊
評価は★4.0。コンサルの本というより、仕事の基本を一つずつ言語化した本だ。基本ほど、現場で改めて教わる機会は少ない。だからこそ「なんとなくやっていたこと」に名前がつき、自分の仕事を点検しやすくなる。
- 向いている人:社会人1〜3年目/仕事の進め方を自己流でやってきて、一度型を確かめたい人/会議や上司とのやりとりで空回りしがちな人
- 向かない人:問題解決の手法そのもの(分析手法・フレームワーク)を深く学びたい人
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦/高松智史(ソシム) 評価:★4.0
- 仕事は論点→サブ論点→タスク→スケジュール→作業→アウトプットの順で組み立てる
- メリット・デメリットではなく、評価基準と評価結果で比べる
- 相手の思考をトレースし、質問・報告・会議の作法で人を動かす
仕事の進め方は「論点→タスク」の6ステップ
本書の背骨になっているのが、アウトプットまでの流れを6つに分けた型だ。
論点→サブ論点→タスク→スケジュール→作業→アウトプットのステップ
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト
ポイントは、いきなり「タスク」から始めないこと。まず答えるべき問い(論点)を決め、それを解ける大きさのサブ論点に分ける。タスクはサブ論点に答えるための手段として、そこで初めて出てくる。
| ステップ | やること | 飛ばすと起きること |
|---|---|---|
| 1. 論点 | この仕事で答えるべき問いを決める | 頑張っても「聞きたいのはそこじゃない」と言われる |
| 2. サブ論点 | 論点を答えられる単位に分ける | 問いが大きすぎて手が止まる |
| 3. タスク | サブ論点に答えるための作業を洗い出す | 何のための作業かわからないタスクが増える |
| 4. スケジュール | タスクを時間に割り付ける | 締切直前に詰まる |
| 5. 作業 | 手を動かす | ― |
| 6. アウトプット | 論点への答えとして出す | ― |
※「やること」「飛ばすと起きること」の列は、本書のステップをもとにした筆者の整理。
論点とタスクの違い
論点は「答えるべき問い」、タスクは「その問いに答えるためにやる作業」だ。本書が対立の形で示す「論点バカ VS TASKバカ」という言い方も、この区別を指している。タスクは手を動かしている実感があるぶん、論点を置き去りにしても気づきにくい。「このタスクはどのサブ論点に答えるためのものか」を言えるかどうかが、見分ける目安になる。論点そのものの決め方を深掘りしたいなら、『論点思考』(内田和成)が手前の工程を丁寧に扱っている。
スケジュールと作業:30分単位で設計し、「考える」と「描く」を分ける
ステップ4・5の具体策として本書が挙げるのが、「仕事の設計は30分単位で行う」ことと、「作業は「考える」と「描く」に分ける」ことだ。大きな時間の塊で予定を入れると、その枠をぎりぎりまで使ってしまう。資料も、中身が決まる前にスライドを作り始めると、あとで戻しが増える。考える段階は箇条書きやメモで済ませ、中身が固まってから描く。地味だが、手戻りを減らすには効く。
メリデメではなく「評価基準×評価結果」で比べる
選択肢を比べるとき、つい「メリット・デメリット」を並べたくなる。本書はここに待ったをかける。
メリデメではなく、評価基準と評価結果を括り出す
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト
メリット・デメリットは、見る人によって中身が変わる。ある人にとってのメリットが、別の人にはどうでもいいこともある。だから先に「何で比べるか」という評価基準(軸)をそろえ、そのうえで各案を評価する。軸×案の表に○△×を並べる、いわゆる星取表の形にすると、議論が「どの軸を重く見るか」に集中する。
星取表の例
| 評価基準 | 案A | 案B | 案C |
|---|---|---|---|
| コスト | ○ | △ | × |
| 実行までの早さ | △ | ○ | ○ |
| 効果の大きさ | △ | ○ | ○ |
※架空の例による筆者の作図。
MECEも順番も「意味」を持たせる
同じ文脈で刺さるのが「MECEや構造化はあくまでも手段であり、なんの価値も生んでいない」という指摘だ。きれいに整理しただけでは、新しい価値は生まれていない。整理のあとに何を示唆し、どう動くかが本題になる。並べ方についても、「3つ以上並んだら「順番」に意味を持たせる」とある。並んでいれば読み手は順番に意味を読み取るので、意図がないなら「順不同」と断るほうが親切だ。
相手の思考をトレースする:会議・質問・報告の作法
後半は、人とのやりとりの作法が中心になる。土台にあるのは「相手の思考を汲み取る・トレースする・自らの思考プロセスをアプデする」という姿勢だ。仕事は人を動かして進むので、相手がどう考えるかを知ることが、そのまま仕事の質につながる。
質問は自分の思考プロセスを入れ込んでクローズドクエスチョンにする
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト
「どうしたらいいですか?」というオープンな質問は、自分の考えを持たないまま相手に丸投げしている状態だ。「自分は〇〇だと考えていますが、この理解で合っていますか?」と仮説を入れて聞けば、相手は合っているか違うかを返すだけで済み、自分の思考もそこで更新される。
ほかにも、会議の参加者の立場や性格に「アンテナを立てる」、会議で生まれる材料は発言だけではない、会議のあとは「NAとネクスト論点まで思考する」、そして「相談後は必ず報告する」。どれも、相手の時間と頭を使わせていることへの意識から出てくる作法だ。
詰められた時こそ接近戦:成長するためのスタンス
本書は技術だけでなく、仕事への構え(スタンス)にもページを割いている。印象に残るのがこの一言だ。
詰められた時こそ接近戦
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト
厳しく指摘されたあとは、相手と距離を置きたくなる。だが気まずいのは詰めた側も同じだ。だからこそ自分から話しかけにいく。逃げずに距離を詰めることが、関係を立て直すいちばんの近道になる。
ほかにも、会議では「テンションは+2をイメージする」、反省するときは言い訳をせずに謝り切る、成長を縦軸に置いたときの横軸は「上位レイヤーとの会話量」といったスタンスが並ぶ。「メッセージには湿度がある」という見方も独特で、抽象的に「乾かした」言葉と、生々しく具体的な「乾いていない」言葉を場面で使い分けるよう説いている。
読んで意識するようになったこと
ここからは筆者自身の話。読み終えていちばん残ったのは、6ステップの型だ。「アウトプットから逆算する」と言われても、具体的に何をすればいいのかわからなかったところが、この順番ではっきりした。論点がないままタスクは作れないし、スケジュールを引かずに作業に入ってもいけない。「常にこのステップで仕事ができているか」「論点に対したタスクになっているか」は、問い続けていきたい。
次に変わったのが、一緒に働く人の考え方を意識するようになったことだ。上長がどんな視点で物事を考えているのかを意識しておく。その観点が自分の中になければ、そのポジションの仕事はできないと感じた。会議でも、リスクを気にするタイプの人がいるなら意思決定のトレードオフを資料に書いておく、開発の責任者には開発観点でのレビューを事前にお願いしておく、といった準備ができる。仕事は人を動かして成り立つので、動かしたい人を知っておくことは大事だ。
自分がやりがちなこととして刺さったのは、MECEや構造化に時間をかけて、整理しただけで満足してしまうこと。それから、資料作成に2時間をまとめてブロックして、結局その枠をぎりぎりまで使ってしまうこと。だから30分ごとにゴールを決めて区切り、描く前に箇条書きで中身を固めるようにしていきたい。
「成長の横軸は上位レイヤーとの会話量」も、ちょうど自分でも最近感じていたことだった。フィードバックをもらえる機会を増やせるよう、普段から準備しておきたい。基本ほど教わる機会がないので、初心を忘れないよう定期的に読み返したい一冊だ。
『コンサル一年目が学ぶこと』『イシューからはじめよ』との違い
| コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト | コンサル一年目が学ぶこと | イシューからはじめよ | |
|---|---|---|---|
| 中心のテーマ | 仕事の進め方の型と、人とのやりとりの作法 | 新人が身につける基本スキル | イシューを見極めて解き切る |
| 書き方の特徴 | 「A VS B」の対比で良い例・悪い例を示す | スキルを項目ごとにコンパクトに解説 | 見極め〜分析〜ストーリーラインの流れで解説 |
| 向いている悩み | 自己流の仕事の進め方を点検したい | 社会人の基本をひととおり押さえたい | 作業量のわりに価値が出ない |
※比較は各書の内容紹介と広く知られた主張にもとづく筆者の整理。
『コンサル一年目が学ぶこと』との違い
タイトルが似ているので、大石哲之『コンサル一年目が学ぶこと』と迷う人は多いはずだ。どちらもコンサルの基本を一般の仕事に広げた本だが、本書は「論点バカ VS TASKバカ」のように対比で示す書き方が特徴で、良い例と悪い例の差がはっきり見える。社会人の基本をひととおり押さえたいなら『一年目』、自分の進め方を点検したいなら本書、という使い分けがわかりやすい。
『イシューからはじめよ』と組み合わせる
6ステップの1つ目「論点」の重要性を突き詰めたのが、『イシューからはじめよ』(安宅和人)だ。本書で論点からアウトプットまでの全体の流れをつかみ、イシューで「何に答えを出すべきか」を深める、という順番で読むと理解がつながる。プロジェクト全体の回し方まで視野を広げたいなら、山口周の『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』も相性がいい。目的の確認や期待値調整など、チームで仕事を進めるときの勘所が書かれている。
あわせて読みたい
- 『イシューからはじめよ』(安宅和人)——「問いの質」を上げ、イシューから仕事を始める
- 『論点思考』(内田和成)——解くべき問題=論点の決め方を掘り下げる
- 『外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』(山口周)——目的・期待値調整・定例会議の進め方
よくある質問(FAQ)
Q. 『コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト』の要約は?
仕事を「論点→サブ論点→タスク→スケジュール→作業→アウトプット」の順で組み立てる型と、評価基準で比べる、相手の思考をトレースする、詰められたときこそ距離を詰める、といった作法やスタンスをまとめた本です。
Q. 仕事の進め方の6ステップとは?
論点(答えるべき問い)を決め、サブ論点に分け、それに答えるタスクを洗い出し、スケジュールに落としてから作業し、論点への答えとしてアウトプットする流れです。タスクから始めないのがポイントです。
Q. 論点とタスクの違いは?
論点は「答えるべき問い」、タスクは「その問いに答えるためにやる作業」です。タスクは必ずどれかの論点・サブ論点にひもづいている必要があります。
Q. メリット・デメリットで比べてはいけないのはなぜ?
メリット・デメリットは見る人によって変わるからです。本書は、評価基準(軸)をそろえたうえで各案を評価する、星取表の形で比べることを勧めています。
Q. 『コンサル一年目が学ぶこと』との違いは?
どちらもコンサルの基本を一般の仕事に広げた本です。本書は「A VS B」の対比で示す書き方が特徴で、自分の仕事の進め方を点検したい人に向いています。
Q. コンサル以外の人が読んでも役立ちますか?
役立ちます。論点の立て方、質問・報告・会議の作法など、職種を問わず使える内容が中心です。
まとめ
本書が教えてくれるのは、仕事の質は才能より「型」と「構え」で底上げできるということだ。論点からタスクを作る、評価の軸をそろえる、相手の頭の中を想像する、気まずいときこそ近づく。どれも一度聞けば当たり前に思えるが、忙しいと真っ先に抜け落ちる。だから一度読んで終わりではなく、仕事が空回りしていると感じたときに戻ってくる場所として手元に置いておきたい。
コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 知らないと一生後悔する99のスキルと5の挑戦/高松智史(ソシム) 評価:★4.0
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