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リーダーシップとは何か。肩書きのある人だけの話ではないのか。伊賀泰代『採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの』は、リーダーを「和を尊ぶ人ではなく成果を出してくれる人」と定義し直す一冊だ。この記事では、リーダーシップと問題解決スキルの違い、構築型の能力、早く決断する理由の3つを軸に要点を整理する。
結論:リーダーシップを「性格」ではなく「仕事の仕方」として捉え直す本
論理的思考力や地頭の鍛え方を探して読むと、少し違う方向から答えが返ってくる。本書が優先順位の上に置くのは、リーダーシップと、決断して立場を取る姿勢だ。ノートに残した範囲では、能力の話と姿勢の話が、行き来しながら進む構成だと読んだ。
- 向いている人:問題解決スキルを磨いても、周りが動かず成果にならないと感じている人/チームや案件を任され始めた人
- 向かない人:面接対策のテクニックだけを知りたい人
採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの/伊賀泰代(ダイヤモンド社)
- リーダーとは「和を尊ぶ人」ではなく「成果を出してくれる人」
- 問題解決スキルより、人を巻き込むリーダーシップが必要になる
- 情報が不十分でも早めに決断し、ポジションを取る
リーダーシップとは何か:「和を尊ぶ人」ではなく「成果を出す人」
本書でいちばん土台になるのが、リーダーの定義だ。人当たりがよく、場をまとめる人がリーダーだと考えがちだが、本書の基準は成果にある。
リーダーとは「和を尊ぶ人ではなく成果を出してくれる人」である
採用基準
この定義に立つと、リーダーシップは役職や性格ではなく、「成果を出すために何をするか」という行動の問題になる。誰かに任命されるのを待つものではなく、成果が必要な場面でその人が取る振る舞いだ、というのが筆者の読みである。
リーダーシップと問題解決スキルの違い
本書は、問題解決スキルとリーダーシップを並べて、後者を重く見る。問題を解く方法を持っていても、他人を巻き込んだりコミュニケーションを取ったりしなければ実行まで届かない、という理由だ。解けることと、動かして終わらせることは別の能力、ということになる。
| 一般的に思われがちなこと | 本書の立場 | |
|---|---|---|
| リーダーとは | 和を尊び、場をまとめる人 | 成果を出してくれる人 |
| 問題解決に必要なもの | 問題解決スキル | 問題解決スキルよりリーダーシップ |
| 決断のタイミング | 情報が揃ってから | 情報や時間が不十分でも、早めに決める |
※表の「一般的に思われがちなこと」の列は、本書の立場と対比するために筆者が整理したもの。本書にこの表があるわけではない。「本書の立場」の列はノートの引用に基づく。
リーダーの条件:決断とファーストペンギンを厭わない
では、リーダーは何をするのか。ノートにある本書の答えは、決断することだ。
情報や時間も不十分な中で決断をすることがリーダーの役目
採用基準
決めるために情報が揃うのを待つのではなく、揃わない中で決めるのが役目だという。加えて、ファーストペンギンになることは必ずしも得な選択ではないが、それでも厭わないのがリーダーだと書かれている。損得で動くかどうかを、リーダーかどうかの分かれ目として置いているわけだ。
早く決断するとなぜよいのか
本書の理由は、早めに決断することで様々な問題点が浮かび上がり、改善や修正を素早く行えるから、というものだ。決断を「正解を当てる行為」ではなく、「問題を表に出す行為」と見ている。遅らせるほど、直すタイミングも遅れる。日々の仕事では、常にリーダーシップを持った仕事をし、「自分だったらこの決断をする」というポジションを取ることが求められる、とも整理されている。
構築型の能力とは:インテリジェントと思われる力の正体
もう1つの軸が、どんな能力が高く評価されるかという話だ。
最もインテリジェントと思われている能力は構築型の能力である
採用基準
ノートの整理では、構築型の能力とは、独自性があり、実現した時のインパクトが極めて大きな仮説を立てる能力、そして0から新しい提案の全体像を描く構想力や設計力を指す。与えられた問いに速く正解を出す力ではなく、問いと全体像を自分で組み立てる力だ。論理的思考力が土台でも、そこから「何を構想するか」が問われる、という順序で読んだ。
成長スピードの速い人とは:面接で見られる学びの速さ
採用の場面について、本書に具体的な描写がある。成長スピードの速い候補者は、面接中に聞いた相手の言葉からその場で何かを学び、次の質問ですぐ回答を変えてくる、というものだ。知識の量や過去の実績ではなく、その場で吸収して使い直す速さが見られている。これは面接に限らず、日々の仕事でフィードバックをどれだけ即座に反映できるかという話にも置き換えられる。
他の本との比較:何を「できる」とするのか
同じ「仕事ができる」を扱う本でも、見ている軸は違う。
| 本 | 主に見ている軸 | 本書との関係 |
|---|---|---|
| 本書 | リーダーシップ・決断・構築型の能力 | —— |
| 『論点思考』 | 解くべき問題そのものを定める力 | 本書の「構想する力」の手前を支える |
| 『「仕事ができる」とはどういうことか?』 | 仕事の質・「できる」の定義 | 本書の成果基準と並べて読める |
| 『コンサルが最初の3年間で学ぶコト』 | 若手のうちに身につける仕事の基本 | 本書が示す方向性に、日々の型を足す |
※表の「主に見ている軸」「本書との関係」は、各書の主題について筆者がざっくり対比したもの。細部は各書評を参照。
問題の設定を扱う『論点思考』と、問題を解いたあとに人を動かして成果にする本書は、前後の関係にある。「何を解くか」と「どう動かすか」をつなげて読むと、本書の主張が立体的になる。
読んで考えたこと(筆者)
本書が言うのは、成果が出ない原因は「スキル不足」より「決めて動かす人がいないこと」にある、ということだと読んだ。この見方に立つと、リーダーシップは特別な人の資質ではなく、決断してポジションを取るという、誰でも日々選べる行動になる。
あわせて読みたい
- 【書評】論点思考(内田和成)——何を解くべきかを決める
- 【書評】「仕事ができる」とはどういうことか?——仕事の質の考え方
- 【書評】コンサルが最初の3年間で学ぶコト(高松智史)——若手のうちに身につける型
- 【書評】イシューからはじめよ(安宅和人)——解くべき問いを見極める
よくある質問(FAQ)
Q. 『採用基準』の要約は?
リーダーを「和を尊ぶ人ではなく成果を出してくれる人」と定義し、問題解決スキルよりリーダーシップが重要だと説く本です。情報が不十分でも早めに決断してポジションを取ること、独自の仮説や全体像を描く構築型の能力が評価されることが主な論点です。
Q. リーダーシップとは何ですか?
本書では、役職や性格ではなく、成果を出すために行動することとして描かれます。リーダーは和を尊ぶ人ではなく、成果を出してくれる人だという定義です。
Q. 構築型の能力とは何ですか?
独自性があり実現した時のインパクトが大きな仮説を立てる能力、そして0から新しい提案の全体像を描く構想力や設計力のことです。本書ではこれが、最もインテリジェントと思われている能力とされています。
Q. リーダーシップと問題解決スキルの違いは?
問題解決スキルは解き方を知っていること、リーダーシップは他人を巻き込み、コミュニケーションを取って実行まで届けることです。本書は、問題解決の方法があっても後者が必要不可欠だと述べています。
Q. 決断を早くしたほうがよいのはなぜですか?
本書では、早めに決断することで様々な問題点が浮かび上がり、改善や修正を素早く行えるからだと説明されます。情報や時間が不十分な中で決めること自体がリーダーの役目とされています。
まとめ
この本が動かすのは、「能力があれば評価される」という前提のほうだ。解く力があっても、動かして成果にする人が別にいるなら、そちらがリーダーと呼ばれる。決断して、ポジションを取る。その地味な繰り返しの中に、リーダーシップは置かれている。
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