【本要約】売れるもマーケ当たるもマーケ(アル・ライス、ジャック・トラウト)
マーケティングの本質は何か。多くの企業が「優れた製品を作れば売れる」と考えがちだが、実際には「知覚をめぐる戦い」である。マーケティングの世界的権威であるアル・ライスとジャック・トラウトは、マーケティングの成功法則を「一番手の法則」「カテゴリーの法則」など22の法則として体系化した。本書は、製品の優劣ではなく、顧客の心の中でのポジショニングが成功の鍵であることを示し、実践的なマーケティング戦略を提示する。
引用と学び
引用1:マーケティングは知覚をめぐる戦いである
「マーケティングとは、知覚をめぐる戦いであって商品をめぐる戦いではない」
多くの企業は「製品が優れていれば売れる」と考えがちだが、これは誤解である。マーケティングの本質は、製品の機能や性能を競うのではなく、顧客の心の中でのポジショニングを競うことだ。例えば、コカ・コーラとペプシコーラの味の違いを科学的に検証しても、多くの人は区別できない。しかし、顧客の心の中では明確な違いが存在する。コカ・コーラは「本物のコーラ」、ペプシは「若者のコーラ」というポジションを確立している。この知覚の違いこそが、マーケティングの戦場なのである。製品開発に注力するだけでなく、顧客の心の中でのポジショニングを意識することが、マーケティング成功の鍵となる。
引用2:一番手の法則 – 先頭を切ることが重要
「マーケティングの基本的な課題は、あなたが先頭を切れる分野を想像することである。これが『一番手の法則』である。他にも漁っていることよりも、先頭を切ることの方が大切なのだ」
マーケティングで最も重要なのは、既存のカテゴリーで競争するのではなく、新しいカテゴリーの先頭に立つことである。例えば、レッドブルは「エナジードリンク」という新しいカテゴリーを創出し、その先頭に立つことで成功した。既存の「清涼飲料」カテゴリーでコカ・コーラやペプシと競争していたら、勝ち目はなかっただろう。しかし、新しいカテゴリーを創出することで、圧倒的なシェアを獲得した。スタートアップや新規事業においても、この法則は重要だ。既存市場で競合と直接戦うのではなく、「自分だけが先頭に立てる分野」を見つけ、そこに集中することが成功の鍵となる。カテゴリーの先頭に立てば、長期的に優位性を維持できる。
引用3:カテゴリーでトップになることの重要性
「カテゴリでとにかくトップにならなくてはならない」
顧客は、カテゴリーのトップブランドを記憶する。2位以下のブランドは、顧客の心の中から消えていく。例えば、「コピー機」と言えばゼロックス、「カメラ」と言えばキヤノンやニコンが思い浮かぶが、2位以下のブランドはなかなか思い出せない。この心理的特性を理解すれば、マーケティング戦略が明確になる。既存のカテゴリーで2位以下に甘んじるのではなく、新しいカテゴリーを創出してそのトップになるか、既存カテゴリーでトップを目指すかのどちらかである。特にスタートアップは、既存カテゴリーでトップを目指すのは困難なため、新しいカテゴリーの創出に注力すべきだ。カテゴリーのトップになることが、長期的な成功の基盤となる。
引用4:新製品開発は「どこが優れているか」ではなく「どこが新しいか」
「新製品開発の際には『この製品は競合よりもどこが優れているのか』ではなくて『どこが新しいか』が重要。どのカテゴリーでトップになるのかを決めること」
多くの企業は新製品開発の際、「競合より優れた機能」を追加しようとする。しかし、これは間違ったアプローチだ。重要なのは「どこが新しいか」、つまり「どの新しいカテゴリーでトップになるか」を決めることである。例えば、iPhoneは「スマートフォン」という新しいカテゴリーを創出した。既存の携帯電話より優れた機能を持っていたから成功したのではなく、全く新しいカテゴリーの先頭に立ったから成功したのである。プロダクトマネージャーは、機能追加に注力するのではなく、「この製品はどの新しいカテゴリーのトップになれるか」を考えるべきだ。新しいカテゴリーを創出できれば、競合との直接的な競争を避け、圧倒的な優位性を獲得できる。
引用5:顧客は新しいカテゴリーに興味を抱く
「顧客はカテゴリーの話になると心を開く、新しいものには誰でも興味を抱くから」
人間は新しいものに興味を抱く心理的特性がある。既存製品の改良版よりも、全く新しいカテゴリーの製品の方が顧客の関心を引く。例えば、「より良いスマートフォン」よりも「スマートウォッチ」の方が顧客の興味を引く。この心理を理解すれば、マーケティング戦略が明確になる。既存カテゴリーでの競争に注力するのではなく、新しいカテゴリーを創出し、顧客の興味を引くことが重要だ。マーケティング担当者は、製品の機能を説明するのではなく、「この製品はどの新しいカテゴリーなのか」を明確に伝えるべきである。新しいカテゴリーの話になると、顧客は心を開き、興味を持ってくれるのである。
引用6:マーケティングは長期的には二頭の馬のレースになる
「マーケティングは長期的には二頭の馬のレースになるものだと知っていれば、短期の戦略を練る際に役立つ」
多くのカテゴリーは、長期的にはトップ2のブランドが市場を支配する構造になる。例えば、コーラ市場はコカ・コーラとペプシ、航空会社はアメリカン航空とユナイテッド航空、クレジットカードはVisaとMastercardが支配している。この「二頭の馬のレース」の法則を理解すれば、マーケティング戦略が明確になる。3位以下のポジションに甘んじるのではなく、トップ2を目指すか、新しいカテゴリーを創出してそのトップになるかのどちらかである。スタートアップや新規事業においても、この法則は重要だ。既存カテゴリーで3位以下を目指すのではなく、新しいカテゴリーのトップを目指すべきである。長期的な視点で戦略を立てることが、成功の鍵となる。
引用7:トップシェア製品の反対を提供する
「トップシェアの製品のエッセンスを見つけ出し顧客にそれと反対のものを提供する」
既存カテゴリーでトップを目指す場合、トップブランドの「反対」を提供することが有効な戦略となる。例えば、コカ・コーラが「本物のコーラ」というポジションを確立しているなら、ペプシは「若者のコーラ」という反対のポジションを確立した。この戦略により、ペプシは2位のポジションを確立できた。マーケティング担当者は、トップブランドの本質的な特徴を見つけ出し、その反対を提供することで、明確なポジショニングを確立できる。ただし、この戦略は2位を目指す場合に有効であり、トップを目指す場合は新しいカテゴリーの創出が重要である。競合分析においても、単に機能を比較するのではなく、「トップブランドの本質は何か」「その反対は何か」を考えることが、戦略的なポジショニングにつながる。
まとめ
「売れるもマーケ当たるもマーケ」は、マーケティングの本質を「知覚をめぐる戦い」と定義し、22の法則を通じて実践的なマーケティング戦略を提示する一冊である。製品の優劣ではなく、顧客の心の中でのポジショニングが成功の鍵であることを明確にし、「一番手の法則」「カテゴリーの法則」など、具体的な戦略指針を提供する。本書を読むことで、既存市場での競争ではなく、新しいカテゴリーの創出とトップポジションの確立が重要であることを理解できる。特に、スタートアップや新規事業のマーケター、プロダクトマネージャーにとって、カテゴリー思考とポジショニング戦略は必須のスキルである。製品開発に注力するだけでなく、顧客の心の中でのポジショニングを意識し、新しいカテゴリーの先頭に立つ戦略を実践しよう。
是非読んでください!!