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【本要約】なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる―(音部大輔)

目次

なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる―(音部大輔)

「なぜ「戦略」で差がつくのか」は、マーケティングにおいて戦略思考がいかに重要かを解説した一冊です。著者の音部大輔氏は、戦略と計画の違い、戦略が必要な理由、そして効果的な戦略の立て方を体系的に説明しています。本書では、戦略を「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」と定義し、限られた資源で最大の成果を出すための思考法を提示しています。

引用と学び

引用1:戦略と計画の違いを理解する

戦略は方向性を指示したり、取捨選択して計画をつくったりする際の判断基準を示す働きを期待されている。ここに戦略と計画は大きな違いがある。

多くのマーケターが陥りがちな誤解は、戦略と計画を混同することです。計画は「何を、いつ、どのように実行するか」という具体的な行動の羅列ですが、戦略は「なぜその方向性を選ぶのか」「何を優先し、何を捨てるのか」という判断基準そのものです。戦略がない状態で計画だけを立てると、表面的な施策の羅列になり、成果につながらないことが多々あります。

実践的なアドバイスとして、マーケティング施策を立案する際は、必ず「戦略シート」と「計画シート」を分けて作成することをおすすめします。戦略シートには「目的」「現状の課題」「競合との差別化ポイント」「優先順位の判断基準」「成功の定義」を記載します。例えば、「新規顧客獲得を増やす」という目的に対して、戦略シートでは「既存の広告チャネルでは競合と差別化できないため、インフルエンサーマーケティングに集中する」という方向性を明確にします。判断基準として「1顧客獲得単価が5,000円以下」「3ヶ月以内に100名獲得」を設定します。この戦略シートが完成してから、計画シートで「どのインフルエンサーに依頼するか」「いつ配信するか」「予算配分はどうするか」という具体的な実行計画を立てます。この順序を守ることで、施策の方向性がぶれず、チーム全体が同じ判断基準で意思決定できるようになります。また、施策の効果が思わしくない場合も、戦略シートを見直すことで、根本的な方向性の見直しが可能になります。

引用2:戦略は目的を達成するための手段である

戦略は、目的をどうやって達成するかを示すべきもので、目的そのものであるべきではない。戦略が具体的な行動計画を導くものであって計画そのものではないように、目的は戦略が達成を助けるものであって戦略そのものではない。

目的と戦略の関係性を正しく理解することは、効果的なマーケティングを実践する上で不可欠です。目的は「何を達成したいか」というゴールであり、戦略は「そのゴールにどう到達するか」という道筋です。目的を戦略と混同すると、方向性が定まらず、施策が拡散してしまいます。

実践では、マーケティング目標を設定する際に「目的→戦略→計画」の階層構造を明確にすることを推奨します。まず、目的を「SMAC」の基準で定義します。Specific(具体的に数値化)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Consistent(上位概念との一貫性)です。例えば、「売上を前年比20%増加させる」という目的を設定した場合、次のステップで「なぜ20%なのか」「どのセグメントで達成するのか」を明確にします。次に、この目的を達成するための戦略として「既存顧客のリピート購入率を30%向上させる」という方向性を設定します。この戦略は目的そのものではなく、目的達成のための手段です。最後に、この戦略を実現するための計画として「リピート購入促進メールを月2回配信」「会員ポイント還元率を2%に引き上げ」などの具体的な施策を立案します。この階層構造を文書化し、チームで共有することで、「なぜこの施策を行うのか」が明確になり、施策の効果測定も適切に行えるようになります。また、施策がうまくいかない場合も、目的・戦略・計画のどのレベルで問題があるかを特定しやすくなります。

引用3:戦略が必要な理由を理解する

戦略が必要な第1の理由は「達成すべき目的があるから」である。対偶で説明するなら、「達成すべき目的がなければ、戦略は必要ない」となる。

戦略が必要な理由を理解することは、戦略思考の第一歩です。目的がなければ、どこに向かえばいいのかわからず、戦略を立てる意味がありません。逆に、明確な目的があれば、その目的を達成するための最適な道筋を考える必要が生じます。

実践では、マーケティング施策を立案する前に、必ず「目的定義書」を作成することをおすすめします。この定義書には「なぜこの施策が必要なのか」「何を達成したいのか」「達成したらどうなるのか」を明確に記載します。例えば、「SNS広告を開始する」という施策の場合、目的定義書では「新規顧客の認知を拡大し、3ヶ月以内に500名のリードを獲得する」という目的を設定します。この目的が明確でない場合、「とりあえずSNS広告をやってみる」という状態になり、効果測定もできず、予算の無駄遣いにつながります。目的が明確になれば、次に「その目的を達成するために、どのSNSプラットフォームが最適か」「どのようなコンテンツが効果的か」「どのようなターゲット設定が適切か」という戦略を考えることができます。また、目的が複数ある場合は、優先順位をつけることが重要です。「認知拡大」と「売上増加」の両方を目的にするのではなく、「まず認知拡大を優先し、認知が一定レベルに達したら売上増加にシフトする」というように、時系列で優先順位を設定します。この目的定義書を定期的に見直し、市場環境や事業状況の変化に応じて更新することで、常に適切な戦略を立てられるようになります。

引用4:戦略の本質は資源の最適配分である

戦略を定義付けるための3つ目の質問、「なぜ戦略が必要なのか?」に対する答えは、「達成すべき目的があり、かつ資源が有限であるから」である。目的がなければ戦略は必要ないし、資源が無限であれば戦略は必要ない。そして、この議論は戦略の定義をわかりやすく示唆している。  戦略は有限の資源をもって目的を達成するときに必要である。ということは、戦略を定義付ければ、「目的達成のために資源をどう利用するかの指針」となる。

戦略の本質は、限られた資源(予算、時間、人的リソースなど)をいかに効果的に配分するかです。資源が無限にあれば、あらゆる施策を同時に実行できますが、現実には常に制約があります。その制約の中で最大の成果を出すために、戦略が必要になります。

実践では、「資源配分マトリクス」を作成し、限られた予算を最適に配分することをおすすめします。マトリクスの縦軸に「施策の種類」(例:広告、コンテンツマーケティング、イベントなど)、横軸に「期待効果」と「実行可能性」を配置します。各施策に対して、期待効果(1-5点)と実行可能性(1-5点)を評価し、掛け算したスコアで優先順位を決定します。例えば、予算が100万円ある場合、「SNS広告(期待効果4×実行可能性5=20点)」「インフルエンサーマーケティング(期待効果5×実行可能性3=15点)」「コンテンツ制作(期待効果3×実行可能性4=12点)」という評価をした場合、SNS広告に予算を重点配分します。ただし、リスク分散の観点から、上位3つの施策に予算を分散配分することも検討します。また、時間という資源も有限であるため、「短期で効果が出る施策」と「中長期で効果が出る施策」のバランスを取ることも重要です。例えば、短期施策として「既存顧客へのメール配信」、中長期施策として「SEO対策」に同時に取り組むことで、継続的な成果を生み出せます。この資源配分マトリクスを四半期ごとに見直し、施策の効果を測定して次期の配分を最適化することで、限られた資源で最大の成果を出せるようになります。

引用5:問題定義が成功の半分を決める

「解決すべき問題がうまく定義付けられた時点で、問題の半分は解けたようなものだ(A problem well defined is half solved.)」という言葉がある。1876年生まれのアメリカの発明家、チャールズ・ケタリングの言葉だ。至言である。

問題を正しく定義することは、戦略立案において最も重要でありながら、最も見落とされがちなステップです。問題の定義が曖昧だと、間違った方向に施策を打ってしまい、時間と資源を無駄にすることになります。逆に、問題が明確に定義されれば、解決策は自然と見えてきます。

実践では、「問題定義シート」を作成し、表面的な問題ではなく、本質的な問題を特定することをおすすめします。シートには「表面的な問題」「なぜそれが問題なのか(5回のなぜ)」「真の原因」「影響範囲」「解決したらどうなるか」を記載します。例えば、「売上が伸び悩んでいる」という表面的な問題に対して、「なぜ売上が伸び悩んでいるのか」→「新規顧客が増えていない」→「なぜ新規顧客が増えていないのか」→「認知度が低い」→「なぜ認知度が低いのか」→「マーケティング予算が不足している」というように、5回「なぜ」を繰り返すことで、真の原因である「マーケティング予算の不足」にたどり着きます。ただし、予算不足が真の原因とは限りません。さらに深掘りすると、「予算はあるが、効果的な施策に使えていない」という別の問題が見えてくるかもしれません。この問題定義のプロセスをチームで行い、複数の視点から問題を検証することで、より正確な問題定義が可能になります。問題が明確に定義されれば、次に「その問題を解決するために、どのような戦略が有効か」を考えることができます。また、問題定義の段階で、解決不可能な問題(例:市場規模が小さすぎる)を早期に発見できれば、無駄な施策を避けることができます。

引用6:問題を再解釈する2つの思考法

ここでふたつのThought-starter questionを紹介しよう。ひとつは「なにが問題か?(Whats wrong?)」である。もうひとつは、「ある場合とない場合(With and without)」である。

問題を多角的に捉え直すことは、より効果的な戦略を生み出すために不可欠です。「なにが問題か?」という問いは、現状の課題を明確にし、「ある場合とない場合」という問いは、施策の必要性を検証します。この2つの思考法を組み合わせることで、本質的な問題にたどり着き、本当に必要な施策を見極められます。

実践では、マーケティング施策を検討する際に、必ず「問題分析シート」と「施策検証シート」を作成することをおすすめします。問題分析シートでは、「なにが問題か?」という問いに対して、「現状」「理想」「ギャップ」「ギャップが生じている理由」を記載します。例えば、「新規顧客獲得数が目標の50%しか達成できていない」という問題に対して、理想は「月間100名の新規顧客獲得」、ギャップは「50名不足」、理由は「既存の広告チャネルでのリーチが限界に達している」と分析します。次に、施策検証シートでは、「ある場合とない場合」という問いを使って、施策の必要性を検証します。例えば、「インフルエンサーマーケティングを実施する場合」と「実施しない場合」を比較します。実施する場合のメリットは「新規顧客獲得チャネルの拡大」「ブランド認知の向上」、デメリットは「コストがかかる」「効果測定が難しい」です。実施しない場合のメリットは「コスト削減」「既存施策に集中できる」、デメリットは「新規顧客獲得の伸び悩みが続く」「競合に差をつけられる」です。この比較により、施策の必要性と優先順位が明確になります。また、「ある場合とない場合」で意思決定ができない施策は、そもそも必要ない可能性が高いため、検討から除外できます。この2つの思考法を定期的に適用することで、問題の本質を捉え、効果的な戦略を立案できるようになります。

引用7:差別化こそが戦略の核心である

大きな目的を達成しようと戦略を組み上げるときには、いかに競合あるいは過去とは違うことをするか、もしも同じことをするのであれば、いかに違うようにするか、が重要である。

戦略の核心は差別化にあります。競合と同じことをしていては、差をつけることはできません。また、過去と同じアプローチを続けていても、市場環境の変化に対応できません。戦略を立てる際は、常に「何が違うのか」「なぜそれが優位性になるのか」を明確にする必要があります。

実践では、「差別化マトリクス」を作成し、競合分析と自社の強みを組み合わせて、独自の戦略を立案することをおすすめします。マトリクスの縦軸に「競合の施策」(例:SNS広告、コンテンツマーケティング、インフルエンサー連携など)、横軸に「自社の強み」(例:技術力、ブランド力、顧客データなど)を配置します。各セルに「競合が実施している施策を、自社の強みでどう差別化できるか」を記載します。例えば、競合が「一般的なSNS広告」を実施している場合、自社の強みである「豊富な顧客データ」を活用して、「パーソナライズされたSNS広告」で差別化します。また、競合が実施していない施策を、自社の強みで実施することも差別化になります。例えば、「技術力」という強みを活かして、「インタラクティブなコンテンツマーケティング」を実施することで、競合との差別化を図ります。さらに、同じ施策を実施する場合でも、「実施方法」を変えることで差別化できます。例えば、競合が「単発のインフルエンサー連携」を実施している場合、自社は「継続的なパートナーシップ」を構築し、より深い関係性を築くことで差別化します。この差別化マトリクスを定期的に見直し、競合の動向や市場環境の変化に応じて更新することで、常に独自の戦略を維持できます。また、差別化ポイントを明確にすることで、チーム全体が同じ方向を向いて施策を実行できるようになります。

まとめ

「なぜ「戦略」で差がつくのか」は、マーケティングにおいて戦略思考がいかに重要かを体系的に解説した一冊です。特に「戦略は目的達成のために資源をどう利用するかの指針」という定義は、日々のマーケティング業務で成果を出すために不可欠な考え方です。戦略と計画の違い、問題定義の重要性、差別化の必要性など、すぐに実践できる思考法が豊富に紹介されており、マーケターや事業企画担当者など、戦略立案に関わるすべての人に価値のある内容となっています。本書を読むことで、限られた資源で最大の成果を出すための戦略思考が身につき、競合に差をつけるマーケティングが実践できるようになるでしょう。

是非読んでください!

た、音部大輔氏の本は以下でも紹介しているので、ぜひご覧ください…!

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