戦略質問: 企業の課題と解決策を見抜く
「戦略質問」は、戦略そのものを語る本というより、「良い戦略はどんな問いから生まれるのか?」にフォーカスした一冊だと言えます。なんとなく議論を始めるのではなく、質の高い質問を通じて思考を深め、組織や自分自身の意思決定の精度を上げていくための実践的なヒントが詰まっています。戦略や企画に関わる人はもちろん、キャリアや人生の方向性を考えたい人にも刺さる本です。
引用と学び
引用1:質問が潜在意識を呼び起こす
「質問に答えようと考えることが、自分の潜在意識を呼び起こしたり、思い出してまとめたりという作業になってくる」
この一文は、「良い質問に出会うだけで思考は勝手に深まる」という事実をよく表しています。会議で「何か意見ありますか?」と聞かれても出てこないのに、「この施策がうまくいかなかった一番の理由をひとことで言うと?」と聞かれると、自然と頭が動き始めます。自分の経験や感覚は、ふだんはバラバラの状態で眠っていますが、問いが加わることで初めて整理され、言語化される。戦略を考えるとき、「まず資料を集める」よりも「まず良い質問を置く」ほうが、結局は速く深く本質にたどり着けるという実感があります。日々の1on1や振り返りでも、「質問の質」を上げることを意識するだけで、メンバーの内側から出てくる言葉のレベルが大きく変わってきます。
引用2:非日常の問いが「ひらめき」を生む
「発想のスタートが「ひらめき」であるため、いかに相手の脳に非日常を与えるかが重要でそのために、問いかけを磨くことが有効」
良い戦略やアイデアは、たいてい「いつもの延長線上」からは生まれません。普段と同じ問いを立てている限り、出てくる答えもいつもと同じです。だからこそ、あえて相手の脳に「非日常」を投げ込むような問いが必要になります。たとえば、「この事業をゼロからやり直すなら、まず何をやめる?」や「10倍の予算があるとしたら、逆に今は何をやらないと決める?」といった問いは、日常の制約を一度外させてくれます。ワークショップや戦略合宿を設計するときも、「非日常な問いのリスト」を事前に用意しておくだけで、場のアウトプットの質が目に見えて変わってきます。
引用3:「何をもって」を先に決める
・「何をもって分析が終わったと言えるか
・何をもって今回のPJが成功だったと言えるか」
戦略やプロジェクトの議論でよく起きるのが、「終わりが見えない問題」です。分析をいつまでも続けてしまったり、PJが終わったのかどうかが曖昧なままダラダラと続く。これを防ぐ一番シンプルな方法が、「何をもって終わり・成功と言えるか」を最初に決めてしまうことです。たとえば、「分析が終わった状態=仮説A/B/Cのどれを採用するか意思決定できるだけのデータが揃っていること」と定義しておけば、どこまでやればいいかが明確になります。戦略も同じで、「この戦略が良かったと言える状態」を最初に言語化しておくことで、途中の判断がぶれにくくなります。
引用4:トレードオフを正面から見る
「新たな戦略策定によってどこが弱くなるか(トレードオフになる点はどこか)」
新しい戦略を立てるとき、人はどうしても「得られるメリット」だけを見がちです。しかし、どんな戦略にも必ずトレードオフが存在します。たとえば、「高単価エンタープライズに集中する」という戦略を取れば、「小口顧客の取りこぼし」や「営業サイクルの長期化」といった弱点が必ずセットでついてきます。この引用は、「戦略とは、どこを捨てるかを決める行為でもある」という当たり前を思い出させてくれます。戦略策定の場では、「この戦略案のメリットは?」だけでなく、「この案を選ぶと、どこが確実に弱くなる?」を議論の必須項目にしておくと、後からの後悔や争いごとをかなり減らせます。
引用5:「現状」と「理想」を揃えてから議論する
「問題や課題の洗い出しのmtgの際には、「現状」と「理想」の認識を参加者で揃える」
会議がかみ合わない一番の理由は、「前提となる現状」と「目指している理想像」が人によってバラバラなことです。ある人は「現状はかなり良い」と思っていて、別の人は「現状は危機的だ」と感じている状態で議論を始めれば、当然話は平行線になります。問題出しのミーティングでは、まず「数字・事実ベースの現状」と「1〜3年後にありたい姿」をホワイトボードに並べる時間を10〜15分とるだけで、その後の議論の質が一気に上がります。戦略を考える前に、「そもそも、今をどう見ていて、どこを目指しているのか?」を揃える作業こそが、実は一番のレバレッジポイントだったりします。
引用6:10個のセントラルクエスチョンで戦略の核心をえぐる
・この戦略の成功によりどんな恩恵を受けるか?
・現在の課題が解決したとして、何が実現できているか?
・この世から消えた時に誰が悲しむか?
・このままの状態だとした場合。X day(終焉)はいつくるか?
・新たな戦略策定によってどこが弱くなるか(トレードオフになる点はどこか)?
・日頃の行いは、自分の家族に誇れることか?
・あなたの南極探検は何か?
・世紀の大番狂せをするとしたら、それはどんなものか?
・他の会社に移った時に活躍する予感があるか?
・今回の戦略の実現を組織分掌を考えずに任せる場合は誰にやらせるか?
この10個の問いは、単なる「おもしろい質問集」ではなく、戦略の本質に切り込むチェックリストです。たとえば、「この戦略の成功によりどんな恩恵を受けるか?」と問うと、KPIや売上だけでなく、顧客・従業員・社会へのインパクトまで視野を広げざるを得ません。「この世から消えた時に誰が悲しむか?」は、事業の存在意義を改めて問い直すきっかけになりますし、「X day(終焉)はいつくるか?」は、今のまま何もしなかった場合のリスクを直視させてくれます。戦略合宿や経営会議の前に、この10問を一度ゆっくり紙に書き出して答えてみるだけでも、見えてくる風景が変わります。「問いを変えると、戦略の解像度が一気に上がる」という体験ができるはずです。
まとめ
「戦略質問」は、派手なフレームワークを教えてくれる本ではありませんが、「良い戦略は、良い問いから始まる」という非常に実践的な視点を与えてくれます。潜在意識を呼び起こす質問、非日常のひらめきを生む質問、トレードオフを直視させる質問、そして事業の存在意義を問う深い質問まで、戦略思考を一段引き上げるための「問いの道具箱」として機能します。日々の会議や1on1、戦略合宿の設計に、この本の問いを少しずつ取り入れていくだけで、議論の質と意思決定の解像度は確実に変わっていくはずです。また、以下で戦略に関する読書録をまとめていますので、ぜひ読んでください!